共同研究:層状酸硫化物中の大きな熱振動に支配された電子構造

大きな熱振動を持つ物質は、超伝導や熱電材料などの機能性と深くかかわっていると考えられており、その機能性の多くは計算化学による電子構造によって説明されています。その一方で、熱振動と電子構造の相関性を示す実験的な証拠を得るのは困難でありました。今回我々は、層状酸硫化物LnOInS2(Ln: La, Ce, Pr)を合成し、Inの大きな熱振動の形状と光吸収との相関性を明らかにしました。光吸収は、バンド端近傍の電子構造を直接反映するため、酸硫化物の原子振動と電子構造の形状との実験的な相関性を示す証拠となります。さらに、この物質が可視光照射下で水素を生成することを発見しました。三浦助教(A01公募)、鱒渕准教授(A01分担)、前田准教授(A03代表)らによる共同研究の成果です。本成果はDalton Transactions誌にオンライン掲載されました。

Hiroaki Ito, Akira Miura, Yosuke Goto, Yoshikazu Mizuguchi, Chikako Moriyoshi, Yoshihiro Kuroiwa, Masaki Azuma, Jinjia Liu, Xiao-Dong Wen, Shunta Nishioka, Kazuhiko Maeda, Yuji Masubuchi, Nataly Carolina Rosero-Navarro, Kiyoharu Tadanaga

“An electronic structure governed by the displacement of the indium site in In–S6 octahedra: LnOInS2 (Ln = La, Ce, and Pr)”
Dalton Transactions. 2019, in press. DOI: 10.1039/c9dt01562k