第十回複合アニオンウェブセミナー開催のお知らせ
第十回複合アニオンウェブセミナー開催のお知らせ
1月26日 17:00~19:00
講師・講演タイトル:
稲熊 宜之(学習院大学 A01計画)
「複合アニオン化合物の合成 ―HSAB則に基づくアプローチを中心に―」
本郷 研太(JAIST A01計画)
「複合アニオン化合物研究における計算材料科学」
辻本 吉廣(物材機構 A01公募)
「酸硫化物系非線形光学結晶の探索固体紫外レーザーを目指して」
ご興味をお持ちいただけましたら、事務局代表補佐(a.nishinosono(a)cstf.kyushu-u.ac.jp (a)を@にしてください)宛にご連絡お願いいたします。
折り返し、ミーティングに関するアドレスをお知らせいたします。
講演者と概要
17:00〜17:40
稲熊 宜之先生(学習院大学 A01計画)
タイトル:複合アニオン化合物の合成 ―HSAB則に基づくアプローチを中心に―
概要:複合アニオン化合物では異種アニオンとカチオン間の化学結合の違いに由来した構造や機能の発現が期待できるが、同時に合成においてしばしば困難に直面する。われわれのグループでは固体アニオン源を用いた複合アニオン化合物の合成手法の開拓や複合アニオン化合物の探索・合成のための指針を見い出すことを目指して研究を行ってきた[1-3]。本セミナーでは、Hard and Soft Acids and Bases (HSAB)則[4]に基づくアプローチによる酸フッ化物の合成を中心に最近の研究について紹介する。
参考文献:
[1] New method for the synthesis of β-TaON oxynitride using (C6N9H3)n
K. Ueda, Y. Inaguma, Y. Asakura, S. Yin, Chem. Lett., 47, 840-842 (2018).
[2] Low-temperature formation of Pb2OF2 with O/F anion ordering by solid state reaction
Y. Inaguma, K. Ueda, T. Katsumata, Y. Noda, J. Solid State Chem., 277, 363-367 (2019).
[3] Synthesis of the perovskite-type oxyfluoride AgTiO2F: an approach adopting the HSAB principle,
Y. Inaguma, K. Sugimoto, K. Ueda, Dalton Trans., 49, 6957-6963 (2020).
[4] Hard and soft acids and bases, R. G. Pearson, J. Am. Chem. Soc., 85, 3533-3539 (1963); Recent advances in the concept of hard and soft acids and bases, R. G. Pearson, J. Chem. Educ., 64, 561-567 (1987), etc.
17:40〜18:20
本郷 研太先生(JAIST A01計画)
タイトル:複合アニオン化合物研究における計算材料科学
概要:本領域では学外10研究グループ以上との共同研究を実施し、既に19件の共著原著論文が出版され、現在も緊密な共同研究を複数展開している。本領域での共同研究を通じて、従来の計算科学的手法の適用だけにとどまらず、新たな計算科学的手法開発という研究展開も拓けた。本セミナー発表では、本領域終了後の共同研究展開を見据え、当研究グループが提供できる計算科学的アプローチを総括したい。
18:20〜19:00
辻本 吉廣先生(物材機構 A01公募)
タイトル:酸硫化物系非線形光学結晶の探索固体紫外レーザーを目指して
概要:対称中心のない(NCS)結晶構造は対称中心のある結晶構造には現れない特異な物性が期待される。例えば、第二高調波発生(SHG)はNCS構造において現れる非線形光学(NLO)現象であり、レーザー光の波長変換の手段として重要な役割を担っている。これまでに高効率のSHG効果を示すNLO結晶は数多く報告されているが、紫外または深紫外光発生については、要求されるUV光透過領域、複屈折率、非線形光学定数を充分に満たすNLO結晶は数えるほどしかない。現在、実用化されているものも含めて紫外光発生用NLO結晶の研究はボレート系に集中しているが、ボレート系に匹敵する分子性アニオンを構成ユニットとした新規材料の報告が近年相次いでいる。例えば、炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなどの酸化物イオンを含む分子性アニオンがUV用途に有用であることが見だされている。一方、カルコゲナイド系(S2-, Se2-)は大きな分極率に由来して大きな非線形光学定数が期待されるが、残念ながらバンドギャップが狭いために可視ー赤外領域用途向きであり、UV領域への応用研究例は全くない。
我々のグループは最近、酸素とカルコゲンの複合アニオン化でUV発生用高強度 SHGを実現できないか検討を行っており、本講演では、それらの取り組みについて紹介する。